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シャビ率いるアルサッド vs CWC出場アルドゥハイル レビュー

こんにちは。Culentです。

今回初めてのブログということでシャビ率いるアルサッドの試合のフル動画を見つけたのでその試合のマッチレビューに挑戦していきます。

 

僕はこの試合がアルサッドの試合をみる初めてのことで、わからないことだらけでしたのでパルパルさんという方に協力していただきました。パルパルさんはアル・サッドを追っている方で今回ブログを制作するにあたって本当に親切に協力してくれました。

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今回取り上げるのは8月9日に行われたアル・ドゥハイル戦。

カタールリーグではこの時シーズン終盤戦であり、このアル・ドゥハイルは最終的にリーグ王者になります。

 

では早速試合を見ていきます。

 

アル・サッドは4141のフォーメーションを選択。

対するアル・ドゥハイルは4231の形を取りました。

 

まずはアルサッドのビルドアップを見ていきます。

アルサッドのビルドアップではアンカーの選手が降りていて3バックを形成するのではなく、LSB+2CBを軸にビルドアップをしていくようです。この時RSBの選手は少し内よりに入ることで偽SBのような形を取りビルドアップを助けます。3バック+2ボランチに近い形ですね。アルサッドのSBは試合を通じてオーバーラップを殆どしてきません。WGのサポートの時に偶に上がってくるくらいで基本的には後方に残っている形が多かったです。追って紹介しますがアルサッドのIHはかなり高い位置をとりますのでリスクマネージメントという意味で攻撃参加を制限しているのかもしれません。そしてWGですがアルサッドのWGは「これでもか!」ってくらいサイドに張ります。それこそペップ×バルサのように。WGがサイドに張ることで相手の守備ブロックを間延びさせ、中央によりスペースを作る働きを担います。この部分はアルサッドでかなり徹底されているところです。「WGは張る」これが原則

 

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白:アルサッド

この試合ではアルサッドのビルドアップに対してアル・ドゥハイルは442のブロックを敷いてきます。2トップはパスコースを切りながら牽制程度のプレスをかけてくる程度で基本はリトリートでカウンターを狙います。

 

ボール保持時アルサッドはかなり中距離~長距離のパスを駆使していきました。所謂「一つ飛ばしのパス」でしょうか。アンカーからCFに当ててIHに落とす、CBからIHに当ててアンカーorSBに落とす、ような形を頻繁に取ります。このやり方の利点は「前を向いている選手を多く使えること」でしょう。ボールを受けた時にいちいちターンする必要がないのでチームとして前進がしやすいです。先日アルサッドがワンタッチでボールを繋いで一気にゴールへ…という動画がTLに流れてきましたが、あの形でした。近くの選手と三角形を組んで。。。という形は最初は殆ど見受けられませんでした。

 

おそらく、読者の方はこれを聞いてすごく驚いたと思います。僕もそうでした。てっきり三角形でのパス交換を意識した攻撃が中心だと思っていましたから。

 

そこでパルパルさんにこの件についてお聞きしたところ、

この攻撃の仕方はシャビ監督でなくその前の監督がやっていた形らしいです。前監督の下アル・サッドではカウンター主体のチームを作っていたらしいのですが、シャビが就くとスタイルを大幅に変更しポゼッションの形を目指しますが、シーズン中のことでしたので上手く戦術を落とし込むことができず、チーム成績にも影響しました。その結果シャビは妥協する形でカウンターの形を取り入れ、そこで取り入れた形の一つがこの攻撃の仕方のようです。実際に結果の方もついてきたようです。

 

次にボール非保持時を見ていきます。アル・サッドではCFが守備しにいくかどうかでハイプレスをとるか、それとも引いて守るかが決まっているようです。CFは守備をサボりがちな選手という印象を受けたのですが、パルパルさんにお聞きしたところ、この選手は前監督の下では守備免除が許されていたようです。そこまで守備に献身的な選手でもないようで(試合によってはするようですが)。ハイプレスは全員で行わないと逆に穴になるだけですので、シャビはこのCFの守備意識を考慮した上でこの形を取っているのでしょう。

 

もしCFが前線からプレスをかけに行こうとすれば他の選手もそれに連動してプレスをかけてきます。4-1-4-1でそのままハイプレス。もしくはRIHが前に出てCFとの2トップ含む4-4-2のハイプレスです。逆にCFがハイプレスをしない選択を取ると他の選手は4-4もしくは4-5のブロックを組みます。この時CFは他の選手と同じようにブロック守備に入りにいくことも多いんですがたまにブロックの外の関係がないところで散歩している姿も伺えました。

 

前監督の下ではアル・サッドは引き込んでのロングカウンターが軸だったようでこのような前からのプレスという形はシャビ監督によるものだったようです。

 

この試合ではこのやり方が裏目に出てしまい前半何度か相手にチャンスを作られます。CFが前からプレスをかけて行った時に二列目の選手までが連動してプレスをかけにいく一方で三列目以下の選手たちはCFがプレスに行ったことに気づかなかったのか、それとも他の理由なのか、連動してプレスに行けなかった時がありました。全員でハイプレスに行けなかった結果二列目と三列目にスペースが大きく開いてしまい、相手にそこを使われてしまっていました。ここは今のバルサでもたまに見かけますね。アルサッドの場合はSBの攻撃参加が少ないので一応枚数はいるのですが。

 

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見やすさのために相手選手を省略しています

結構大袈裟になっちゃった笑

 

前半は一つ飛ばしのパスを駆使しながら中央を基本に攻撃していきます。WGはボールを持てば仕掛ける姿勢を見せますが、あくまで中央のスペースを開けるためにサイドに張ることが最優先で降りてきてゲームメイクしたり、というのはありませんでした。

カッコつけて「5レーン理論」という言葉を用いるとアル・サッドではCF+2IH+WGで5レーンを埋めます。が、今述べたように中央攻撃が基本でしたので攻撃の中心はCF+2IHでした。一方で一つ飛ばしのパスをと多く使っていた事で必然的にボールロストは増え、守備の時間もしばしば見受けられました。

 

そんな中で前半23分。この試合唯一となる得点が生まれます。ビルドアップで中に入ったRSBからLWGへのフィードが相手に取られるとすかさずハイプレスへ移行したLSBが再びボールを奪取。そのままシュートに持っていきますがディフレクション→ルーズボールをLWGが拾いシュート→GKセーブ→こぼれ球をLIHが押し込む。という形でした。

IHを飛びした「一つ飛ばしのパス」こそ失敗したものの、そこからの素早いネガトラでボールを奪い得点に結びつきました。

 

前半30分クーリングブレイクがありました。

このクーリングブレイクを利用してシャビは修正を行います。

改善点は2IHのポジショニング。この時間まで2IHはボール保持時"攻撃の中心"として高い位置にいる時間が多かったのですがこの修正を受けてより自由に動くようになり、アンカーとIHの距離が縮まり、近くの選手との三角形を組みやすくなりました。

この影響を受け先ほど述べたような課題点「前はプレスしに行くけど後方はプレス行かなかった結果中央にスペースができてしまう」も改善されました。アンカー以下がIHの動きをよりしっかり近くで見えるようになったからでしょうか。そしてこの時から一つ飛ばしのパスは減り、近くの選手とのパス交換を意識した攻撃に切り替わりました。

 

対するアル・ドゥハイルはこのクーリングブレイク後にハイプレスの意識が高まったのですが、アル・サッドは既にシャビの修正により選手間の距離感が近くなったためハイプレスをかけられてもパス交換でそれをいなすことができました。さらにアル・サッドは選手間の距離が近くなったことでネガトレの時に直ぐにボールを取り返すことができ、残りの15分はアルサッドの攻撃が殆どでした。IHが動くようになった分相手の守備ブロックはそれに合わせてスライドしますが、そうすることでサイドに張ったWGの片方が常にフリーになるような形になります。これによってWGへのサイドチェンジが光る格好になりました。アル・ドゥハイルのプレスにハマりそうになってもフリーな選手を見つけサイドチェンジをすることでボールロストを回避できていました。結果多くの決定機を演出しますが追加点は惜しくもできませんでした。

 

シャビの修正策がアル・ドゥハイルの修正策より一枚上手でした。

 

後半

 

アル・ドゥハイルは前半と比べるとかなり落ち着いて、かつ的確なプレスをかけるようになりアル・ドゥハイルが押し込む展開になりました。

一方でアルサッドは”攻撃の鍵”CFと2IHが前半クーリングブレイク後通り流動的にプレイしたのですがこれで相手のゴールを脅かすことはありませんでした。中央の3人が流動的に動き相手DFを混乱させることは良かったのですが「+A」がない。混乱させただけで混乱した相手を突き刺すまではいかない。結果対応しやすい状況になってしまっていました。アル・ドゥハイルは前半最後の15分一方的に攻撃されたのでそれを改善したのでしょう。あのシャビの修正も前半最後の15分間こそ相手を出し抜けたものの、それで後半45分を戦うことは難しかったですね。

 

そんな中でアル・サッドはやはり「一つ飛ばしのパス」ではなく近くの選手とのパス交換を意識した攻撃を試みます。しかしパス交換の時に上手く三角形の形が取れずに簡単にボールロストしてはカウンターを喰らってしまいます。二人いても三人目が遠いorパスコースが完全に切られている、という状況になってしまいました。

 

アル・サッドはボールを握られる時間が増えたことでカウンターでの”速攻”を試みますが上手くいきません。中央三人の流動的な攻撃を中心にパスを繋ぐ意識を持って攻撃するのですが相手の勢いに呑まれてしまっているようで、簡単なボールロストを繰り返します。

 

WGも前半と比べるとサイドで持ってもクロスを打つということもなく仕掛ける回数も減りました。これはSBの攻撃参加の制限が裏目に出てしまった格好に思えました。前半はその中でIHがサポートに行ったりSBとWGを繋ぐ三人目の働きをしていたのですが、後半になってより2IHが流動的にポジションを入れ替えながら攻撃していった影響でWGが持った時に「誰がサポートにいくか」というのも曖昧になってしまっていました。

 

ただSBは基本的に低めの位置にポジショニングしていたおかげで被カウンターの時は安心感がありました。それでも相手にチャンスを多く作られましたが。。。

 

63分と80分、90分に選手交代及び75分にはクーリングブレイクでの中断がありましたが状況は好転せず。最後は守り切った形で試合は終わります。後味悪い内容となりましたが1-0アルサッド勝利。アル・ドゥハイルはこの試合を受けこのシーズン二敗目を記録しました。

 

シャビファンとしてはもっと大勝した試合を見たかった気持ちが強いですが、相手も強敵だったのもあって中々厳しい試合展開でした。相手はこの年のリーグ王者でクラブW杯でも出場するチームですからそんな簡単にはいきませんね笑。

ただシャビの考えビルドアップの形…WGの配置等々、所々シャビのやり方を垣間見ることが出来ました。読者の方にどれほど伝えることが出来たかはわからないですが、1人でも多く、また少しでも多くこの試合の形が届いていたら幸いです。

 

ただ調べたところシャビはどうやら4141のフォーメーション以外にも多くの選択肢を持った監督のようで、試合によっては4123は勿論ダイヤモンド型343も敷いてくる試合もあるようです。その形ごとにやり方は異なるでしょうから時間があったらそれもチェックしたいです(次はアル・サッドが大勝した試合を選びたいな笑)。

 

そして忘れてはいけないのはこの試合は昨季の試合だということです。

この試合の1ヶ月後には新シーズンが開幕していますがアル・サッドにはあのカソルラも加入し、またシャビ自身もこのシーズンリーグを落とした反省を活かしてやり方を調整しているでしょう。

 

パルパルさんにお聞きしたところコロナによるリーグ戦中断期間による集中的な戦術の落とし込み及びガビの退団&カソルラの入団のおかげで、今のアル・サッドではポゼッションの形がある程度できるようになっているようです。そしてこれに前監督のカウンターのやり形を組み合わせているようです。またガビのインタビューから「シャビ自身としては前からポゼッションの形に移行したかったものの適した選手がいなかったのと時間もなかったので仕方なくカウンターの形を残している」とパルパルさんは推測されていました。

 

以上です。最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

想像以上にシャビ監督が柔軟にやり方を変更できる監督というのが1番の印象でした。てっきり「カウンターはクソ。ポゼッションしか勝たん」という姿勢だと思っていたので。

 

そしてこのブログを制作するにあたってご親切に協力していただいたパルパルさんには本当に感謝一杯です。

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最後に先制点を決めた時にシャビが得点選手にやったポーズを載せておきます笑。

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